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【アジア最強クラブの育成論 赤窄孝×若山伸太郎×高橋優介】名古屋オーシャンズはなぜ、数多くのタレントを輩出できるのか?

2020.06.01

インタビュー

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舞野隼大

名古屋オーシャンズは、AFCフットサルクラブ選手権を大会最多となる4回、Fリーグを創設13年のうち12回も制覇しているアジア最強クラブだ。これまで何人もの強力な助っ人外国人や国内トップ選手が所属してきた。

しかし、オーシャンズの強さとはタレントの補強だけが理由ではない。では何か。

その一つは、育成力である。

トップチームで戦う篠田龍馬や八木聖人、橋本優也、水谷颯真、笠井大輝、磯村直樹だけでなく、日本代表の主軸・加藤未渚実や、海外へ移籍した平田ネトアントニオマサノリ、次の代表守護神を狙うGK・矢澤大夢といったトップレベルの選手を輩出してきた。さらに、アンダーカテゴリーの代表候補に選ばれた田淵広史や新田駿、川邊寛悟。それに、オーシャンズの育成組織を通過してきた選手がFリーグ各クラブで活躍している現状がある。

つまり、オーシャンズの育成が、日本フットサルの土台を支えていると言っても言い過ぎではないのだ。

では、なぜオーシャンズはたくさんの素晴らしい選手を育てることができるのか。日々、指導者は何に重きを置いているのか。トップチームに求められる「絶対的な勝利」や「結果」との因果はあるのか。

それらのテーマの答えをもつキーマンは以下の3人だ。

若山伸太郎
名古屋オーシャンズサテライト 監督
名古屋オーシャンズU-15 監督

高橋優介
名古屋オーシャンズ コーチ
元名古屋オーシャンズサテライト 監督
元Fリーグ選抜 監督

赤窄孝
名古屋オーシャンズ GKコーチ
名古屋オーシャンズサテライト GKコーチ
名古屋オーシャンズU-18 GKコーチ兼監督
名古屋オーシャンズU-15 GKコーチ

オーシャンズの育成を知ることは、日本フットサルのさらなる飛躍を促すことにつながる。若山、高橋、赤窄という育成のスペシャリストの座談会を通して、アジア最強クラブの育成論を解き明かしていく──。

自分で決断、行動ができるように


──今回のテーマは、名古屋オーシャンズの育成を支える3人が考える「育成論」です。まずは、みなさんそれぞれがどのようにオーシャンズと関わっているかを教えてください。

若山 オーシャンズサテライトとU-15のAチームで監督をしています。オーシャンズのスクールでは、テラスポ鶴舞でU-12とU-10のカテゴリーを週に1回ずつ教えています。加えて、それとは別に月に1、2回のフットサル教室も行っています。

赤窄 オーシャンズの各カテゴリーのGKコーチとU-18の監督を僕はしています。あとは若山コーチと同じで、鶴舞でU-6とU-8のスクールを週に1回ずつ担当しています。

高橋 僕はオーシャンズU-15のBチームと、トップチームのコーチをしています。

──3人が指導者になろうと思ったきっかけはなんでしょうか?

若山 僕は指導者になりたくて自分からオーシャンズの門をたたいたわけでありませんでした。元々は、櫻井(嘉人)GMがオーナーのBANFFスポーツの施設のチームで長くプレーしていました。当時の大洋薬品/BANFFがFリーグに参入して2年目にオーシャンアリーナができて、そのときに「育成組織も立ち上げたい」ということで「コーチをやってみないか?」と声をかけてもらったことがきっかけです。ゼロからの始まりでしたね。

赤窄 小学生のときに「教員になりたい」と思っていたことが僕はスタートです。教育大学に進学して教員免許を取得しました。その頃にフットサル選手としても活動し始めて「若いうちに選手としていろいろなことができるといいな」と思いながら選手生活を送っていました。そこで、人に教えるというものと自分の一生懸命やってきたスポーツの2つの要素が揃っている指導者になりたいと思ったことがきっかけです。

高橋 僕もサッカーの指導者をやりたくて体育系の大学へ進学していました。そのときにアルバイトをしていたのがたまたまBANFFの施設でした。そこでスクールの指導もしていて、櫻井GMと話す中でトップチームのコーチをやっていくという関わりからスタートしました。

──まず、フットサルがうまい選手なのか、フットサルもサッカーも含めたフットボールがうまい選手なのか。3人はどういう選手を育てようとしていますか?

高橋 僕はその2つともちょっと違っていて、自分で行動ができる人を育てたいと思って教えています。それにフットサルを使っているイメージです。やはりトップに昇格できる選手は少ないですし、それだけを見て教えていたら多分、一人のためだけに教えることになってしまう。自分で考えて実行してみて、失敗しながら「ああ、こうやってやるのが楽しんだな」とか「自分で行動できるような人になってほしいな」と思ってやっています。なので質問の答えとはちょっと外れているかもしれないですね。

赤窄 でも、僕もそういうような感じです。元々が人を育てることに視点を置いていたので、自分から学びにいくことや自分から動けるような、人として当たり前のことを前提に教えています。

若山 僕も似たようなところはあります。指導者の中でこういうふうに育ってほしいという思いがある中でも、最後は選手が自分で決めて進んでいかなければいけません。それがフットサルであれ、サッカーであれ、そこに生きる指導をしたいと思っています。なので「絶対にオーシャンズのトップチームへ行け!」ということは求めないです。ここにいることでいろいろな選択肢が見えてきて、上を目指すなら頑張ってほしい。そうでないとしても、フットサルを通じて様々なものとつながったり、フットサルの楽しさが伝わればいいなという気持ちで教えています。

──高橋さんは「人を育てるのにフットサルを使っている」と言われましたが、フットサルだからこそのアドバンテージは何がありますか?

高橋 決断を取れる回数がとても多いことだと思います。僕もそうですけど、日常だと流れに身を任せている人がほとんど。非日常の中でそれができるのはいいなと感じますね。

赤窄 僕はゴレイロの指導を主にしていますけど、同じようなところはあります。フットサルのメリットという話になると、ゴレイロはサッカーよりもボールに触れる機会も含めてゲームに参加する回数が明らかに多いです。そこで自分がどう振る舞うか、決断を取れるかの頻度が多いので、判断力が養われます。あと、フットサルに限ったことではないですけど、プロクラブの育成組織でプレーしているので覚悟を持って勝負ができるとか、仲間と競争できることもメリットなのかなと思います。

若山 フットサルはコートが狭くピッチ内の人数が少ないので展開が速かったりしますけど、必ずしも同じシーンばかりではない。展開が速くても遅くても、常に駆け引きがあります。ただプレーしているだけでも周りとかの声や意見に左右されすぎず、最終的には自分でどうすべきか自信を持ってやれることを重視して見ています。人生を歩んでいく中でフットサルのように常に決断を求められるわけではありませんが、そういう場面は必ず出てきます。決断に至るまでの思考を養うのにフットサルは生きてくると思っています。

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