INSIDE OCEANS

「日本はアジアの2番目。スペインにはボコボコにされた。それが実力」。ブルーノ・ジャパンはW杯優勝に届くのか。吉川智貴が徹底的に語る、日本フットサルの未来とは。

2020.08.13

インタビュー

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名古屋オーシャンズ

今年9月に開幕予定だったワールドカップは、新型コロナウイルスの感染拡大の影響によって、2021年9月の開催へと延期。その出場権を懸けたアジア選手権も、今年2月の開催から11月へとスライドした。

日本フットサルにとって、これが意味するものは何か。

2016年に始まったブルーノ・ジャパンはもともと、2020年の今年、ワールドカップイヤーでその出場権を手にして、世界と対等に渡り合うことを目標に、中長期的に強化されてきたものだ。その意味で、一つ目の関門である東アジアの予選を突破し、2つ目の関門であるアジア選手権に、一つのピークを作った。つまり、一度は「今できる最高の状態」まで高めたものを、改めて見直してプランニングし直さなければならない。

それは果たして、猶予なのか“余計な時間”なのか。それを決めるのは今後の活動次第だろう。

そんな時期だからこそ直撃したいのが吉川智貴だ。

現在、日本代表でもっとも重要とされる、2019年のアジア最優秀選手。名古屋オーシャンズとしてアジアのレベルを体感しているだけではなく、スペイン時代には、いわゆる“ビッグ4”の一角、バルセロナをカップ戦で撃破して、日本人として初めて国王杯の決勝のピッチに立った。世界を知る男でもある。

日本の現在地はどこなのか。この先、世界と戦うために何が必要なのか。

そんな問いかけからスタートしたインタビューは、世界を肌で感じてきた吉川が、現在日本で感じている実情をリアルに映し出す内容となった。日本とスペインとの違い。うまい選手とは何か。コロナ禍で僕らは、何をすべきなのか。日本はこの先、W杯で優勝できるのか──。

“世界のヨシカワ”が、日本フットサルの未来を徹底的に語る。

フットサルの本質を理解しているか、していないか


──昨シーズンはクラブ選手権で名古屋オーシャンズが優勝して、ベトナム代表のタイ・ソンナムの選手としてプレーした清水和也選手が得点王になりました。クラブレベルでは、日本がアジアで大きな存在感を持っている事実があります。そう考えたときに、日本代表を含めた日本の現在地はどのあたりにあるのでしょうか。

大前提として、クラブと日本代表は別の軸があるので、そこを比較できるものではないと思います。ただし、純粋に日本代表のレベルを考えたときに、(2018年に開催された)直近のアジア選手権は準優勝だったので、実力的にはアジアの2番目に位置しているのかなと。やはり1番はイラン。あれから2年で近づいてきている感覚もありますが、同時に、タイや中東各国もすごく実力をつけてきている。以前の勢力図と比較すると、アジアで上位と下位の国の差がなくなっていると感じています。

──クラブレベルでの話ですが、吉川選手はスペインの国王杯で決勝という大舞台を経験しました。そうした試合もそうですし、ワールドカップの緊張感のある試合を戦う上で重要なことは何でしょうか?

僕はまだW杯には出場していないので、これが必要だいうことをえらそうに言える立場ではありません。ただし、自分が経験してきたもので言えることは、どれだけ自分たちに自信を持ってプレーできるかは非常に重要だと思います。どんな試合でも普段のプレーを出せるかどうか。それは過信とは違うものです。

──日本はこの先、W杯本番でスペインやブラジルという強豪国に勝てない限り、世界一になることはできません。そうした国と日本との間には、現在どのような差があると思いますか?

まだまだレベルの差はあります。実際、昨年12月のスペイン遠征でスペイン代表と試合をしたときはボコボコにやられました(2試合戦い、1試合目は0-3、2試合目は1-9)。それが今の自分たちの実力です。だからこそ、どうやってその差を埋めるのかが大事だと思います。

──具体的にはどういうことでしょうか?

僕がスペインでプレーして感じていたのは、「頭のレベル」が違うという感覚でした。当然ながら、その差を埋めることを第一にしたいですが、その差を埋めるのが難しいのであれば、逆にフィジカル的な部分の差を周囲の国よりもいい状態に持っていく。両方とも大事ですが、そのバランスも考えないといけないと思います。

──頭のレベルとはどういうところでしょうか?

端的に言うと、それはフットサルの本質を理解しているか、していないかの差だと思います。ですがこれは見ている人には非常にわかりづらい部分でもあります。

──たしかに「フットサルの本質」とは、非常に抽象度が高いというか、大事だということはわかりますが、自分も即答できるものではありません……。たとえば吉川選手はよく、「スペインはプレスの際のアグレッシブさが日本とは違う」と話していました。そういう部分も本質に近いですか?

アグレッシブさにおいて、今の日本代表のディフェンスは非常にアグレッシブだと思います。そこは以前よりもかなり改善されたところだと思います。自分は映像でしか見ていないですが、12月のスペイン代表との試合では、自分たちが得意としているディフェンスを全く発揮できていませんでした。一つは、そこを突き詰めることも大切。それと、あの試合は攻撃も何もさせてもらえていなかった。自分たちがボールを持っているときの戦い方も改善する必要があります。そこで戦えていなかった理由が「頭の差」にあるのかなと。

──自分たちの土俵へ持ち込むことができなかった。

そうですね。そもそも、自分たちの土俵で戦える相手なのかどうか。あの結果を考えたら、自分たちの土俵で戦える相手ではなかったということになってしまいますね。

──サッカーと違って長くボールを持てない中でも、より主導権を握るためにはどうすべきでしょうか。

正直「ボールを持つ」必要もないのかなと。自分たちが「いかにシュートを打てるか」が大事なわけですから。長くポゼッションすることが目的ではない。どれだけ自分たちが前を向いて、自信を持ってプレーできるか。そこが重要なカギになると思っています。

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