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【ゆるぎなきメンタル術/前編】「昔は不安や緊張が表に出ていた」。王者の守護神・篠田龍馬の抜群の安定感はなぜ生まれたのか?

2020.10.08

インタビュー

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名古屋オーシャンズ

負けることは許されない。名古屋オーシャンズは2007年のリーグ開幕からずっと、その重圧にさらされてきた。タイトルマッチであればなおさらだ。2016シーズン、彼らは一度だけ大きな敗北を喫した。優勝を逃す……あんな経験は二度としたくない。彼らは王座に返り咲き、再び連覇の歴史を歩んでいる。

敗北とは、極論すれば失点すること。ゴールを奪われない限り、負けはない。つまり、名古屋のゴールを守る行為は、勝敗を左右する重責を誰よりも背負うことを意味する。そんな代えのきかないポジションで戦い続けてきたのが篠田龍馬だ。2009年から、すでに10年以上トップでゴールを守ってきた。

篠田といえば、冷静沈着なプレーが持ち味。ピッチの状況を見極める認知と判断、それを可能にする論理的思考と、決断の速さ。なおかつ、アクションの正確さと精密さを兼ね備えている。篠田はなぜ、どんな試合でも平常心を保ち、いつもと同じようにプレーできるのか。リーグ戦の普通の1試合であっても、タイトルマッチであっても、篠田は表情を変えずに淡々とプレーできる。いつもと同じように準備して、ピッチに入り、そして涼しい顔で、ビッグプレーを連発する。自分や味方のミスがあっても、次のプレーに影響を残さない。

それでいて、内側に秘める闘志のようなものもにじみ出ている。つまり、オーラがあるのだ。

篠田はなぜ、365日、同じプレーができるのか。タイトルを掲げ、ひとつの目標に届いた達成感や、燃え尽きることはないのだろうか。不安や緊張はないのか。ゆるぎなきメンタルはなぜ生まれ、どのように成り立っているのか。自分の心と、日々どのように向き合っているのか──。

王者の守護神・篠田龍馬のメンタル術に迫る。

ミスをしてしまった次のプレーが一番大事

──今回は「メンタル」をテーマに深掘りしていければと思います。篠田選手が今のようにブレないメンタルになったのはいつぐらいかわかりますか?

最初に4冠を獲得した(2014/2015)シーズンですかね。川原(永光)さんが退団して1年目で、そのときは「やるしかない」という気持ちが強かった。最初はガムシャラに取り組んでいただけでしたが、その次のシーズンからはメンタルが大事だということに気づきました。

──それまでは篠田選手もメンタル的に難しい時期を過ごしていたんですね。

Fリーグの試合に出始めたときは気持ちに浮き沈みがありましたね。昔は不安や緊張が表に出てしまうようなタイプだったと思います。いい技術を持っていても、それを発揮するための心がないと意味がない。そう感じてから改善していこうと思いました。

──試合中の緊張や不安に打ち勝つためどんなことを取り組んできたのでしょうか?

考えて練習に取り組んで、自分に足りないと思っている部分に対して個人でできるトレーニングもずっとして、練習から細かいことにこだわるようにしていました。あとは映像ですね。試合の映像を見て自分のいいところ、悪いところを確認して「こうしてみよう」「ああしてみよう」と振り返っていました。監督やコーチに言われるものだけではなく、自分で見て感じたものをいかにピッチで出せるかを大事にしていました。そこは今でも変わっていないです。

──根性論ではなく、準備を徹底して自信をつけていった。

そうですね。不安なことが全くない状態で試合に臨めるのがベストです。そうすれば自信を持ってピッチに立てます。長い目で見てもそうですし、試合に向けた1週間でもそう。週末に試合があるからそこへ合わせて練習で自信をつけてコンディションを調整して、悪いなら悪いなりにどうしたらいいか。週末に向けてベストな状態へ持っていくには何をしたらいいのか。どういうメンタルで取り組んだらいいのかを考えるようにしています。

──決勝戦などの大一番で失点してしまった際は特に取り乱してしまいそうですが、そういう場合でも平常心でいる方法は?

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